お風呂から上がり、杏花が斗賀に授乳している間に
自分の髪を乾かして………。
出張帰りの荷物の荷解きをして、
再び明日からの出張に備えて準備を施す。
はぁ……また暫く杏花に逢えない。
まぁ、今回は国内だから差ほど長くはならないが、
それでも、杏花不足は否めない。
溜息まじりにネクタイを選んでいると、
「要~、ご飯にしよう?」
「あぁ、今行く」
寝室の入口から杏花がひょっこり顔を覘かせる。
何てこと無い会話なのに、俺の胸は無意識に高鳴った。
『要』……愛する女性に呼ばれただけで、
こんなにも嬉しいなんてな。
俺は緩む口元を手で押さえ、彼女のもとへ。
今日の夕食は俺の好きなミネストローネ。
杏花の料理はどれも絶品だが、
この具だくさんのミネストローネは格別なんだ。
よくレストランで見かけるそれは殆どが赤みを帯びているが、
本場イタリアのミネストローネは日本とは違う。
日本の肉じゃがと同じで、
イタリアではミネストローネがおふくろの味。
各家庭で色も味も違うし、中身の具も個性豊か。
新婚旅行で行ったイタリアで、杏花はそれを教わって帰って来た。