杏花はハニカミながら俺の首に顔を埋めて……。


俺はチラッと一瞬だけ斗賀に視線を向けた。


……寝てる。


フッ、親孝行な奴だ。


「杏花」


「ん?」


愛しい彼女の名前を呼べば、


彼女は照れた表情で顔を持ち上げ


俺はそんな彼女の唇にそっと唇を重ねた。


夫婦の密な時間を子供には見せられない。


例え、それが生後6か月の子供であっても。


だって、記憶の片隅にでも


杏花の蕩けるような『女』の顔を刻ませたくない。


この顔は、俺だけが知っていればいいだけ。


俺以外の男に、記憶させて堪るもんか。


ここが仕事場だという事も忘れ、


暫しの間、妻とのキスに溺れていた――――。




キスの余韻を愉しみながら


そっと彼女の唇から離れると。


恍惚の表情の彼女に一瞬見惚れてしまった。


やっぱり、この顔は俺だけのものだから……な。


「杏花、どうしてここに?」


「えっ?あっ、沢田さんから連絡を貰って」


「フッ、………なるほどな」


アイツ、やる事がキザ過ぎんだよ!


俺は杏花と共に沢田のもとへ。


すると―――――