「うーん…どうしようかな…何せ今、プーでしょう?…良ければ、ここに置いてよ」

コーヒーカップをのぞき込みながら、鳴海が言った。

「へ?」

千歳が驚いて鳴海の顔を見ると、ゆっくりと鳴海も千歳を見る…

そしてニッコリと、とても優しげに微笑すると、こう言った。

「…ところで、さえちゃん…」

千歳の心臓が、ドクンと鳴った。次の瞬間、ある衝動が胸を占めていく…

「え?これってまさか…また…」

つき上がってくる感情は、自分のものとは別物で…気がつくと千歳は、鳴海に抱き着いていた。

「…やあ、さえちゃん元気だった?」

鳴海はそっと、千歳の背中に腕を回すと抱きしめた。

『うん!お兄ちゃん…会いたかった!』

「うん…」

鳴海の中に直接、さえの言葉が聞こえた…

「鳴海…もしかして、これって…」

千歳は引いていく衝動に解放されて、ようやく口を開く事が出来た。

「うん、当たり、さえちゃんの仕業だね…何だかまだいるような気がして、試してみたんだけど…本当にいたね、かすかだけど…」