「…社長って仕事キライだったし、続ける気もなかったんだよね。でも会社つぶす訳には、いかなかったし…なら、他の人にやってもらおうと考えてさ…」

「じゃあ…」

「晴れて自由の身です」

「そっかー良かった、良かったねー!」

千歳は鳴海の肩を何度も叩いて喜んだ。

「そう、それ…その一言がね、聞きたかったんだ…」

鳴海は満足げに笑った。            
全てが片付いたら、千歳に会いに行こうと考えていた…

でもそれがどうしてなのか、分からずにいた。

今、他愛のない理由だった事に気づく…

ただ単に「良かっね」と言って欲しかったらしい…

鳴海はそこに思い至り、クスリと笑った。

″…オレって単純…?″

鳴海はやっと…背負っていた荷物を降ろしたと、実感する事が出来た。



「…これからどうするの?」

千歳は開店の札を扉にかけ、またカウンターに戻って来るとたずねた。