「パセリちゃん、大げさだなー」

花園は上履きを脱いで、資料室の中央に敷かれたタタミに上ると、こたつに足を入れた。

こたつの上には三人分のお茶と茶菓子、ノートパソコンとMDプレイヤーが置かれていた。

「いえ本当に…良かったです、千歳先輩の音。先輩の言う通りでした」

三波の言葉に花園はうなずく。

「…一緒に全国大会、行きたかったですね…」

「うん…」

「そうですよ先輩!せっかく千歳先輩と花園先輩の、どつき漫才見たさに、ここまで追いかけて来たのに、千歳先輩がいないなんて詐欺です〜」

パセリこと早川は、花園に向かって文句を言った。

「え?漫才…?さぎ?」

花園は言葉の意味をつかみ損ねて、呟いた。

「早川…これでも先輩は頑張ったんだ…無理言うなよ」

三波は後輩をたしなめた。

「ぶーーー」

早川は二つに結った、くせ毛の髪をつかむと大人しくなった。

「…でも…本当、千歳の音、変わってなかったね…」

そこに居たのかというぐらい、ひっそりと座っていた長身の桂木十子が小さく呟いた。

「うん…そうだね桂木」

ニッコリと花園は笑うと、三波と早川の方に向き直った。

「…後は頼むよ、みなみちゃん、パセリちゃん…」

「はい、任せて下さい!」

二人の声が勢い良く重なった。