「…ところで千歳、この間、あの曲弾いてなかった?」

「…え?」

千歳は内心、ギクリとした。

「ブラバンの方に遊びに行った時さ、聴こえきたんだよねー」

「…聴き間違いじゃないの?」

「いーや、聴き間違いじゃないね、オレが千歳の音を聴き間違える訳ないよ。アレは、千歳の音だね」

「あのね…」

何を根拠に…絶対音感の持ち主か…?と突っ込みを入れつつも、動悸は早くなっていく…

「でも、どこから聴こえてくるのか、分からなくてさー校内中探し回っちゃったよ」

″そりゃそうでしょう…″

「…で、どこにいたの?」

まさか屋上にいたとは言えまい…

″ああ、鳴海に怒られる…″

「…それ、私じゃないから、知らない」

千歳は、シラを切り通す事にした。

「ふーん、ま、いいけどさ。それより一つ、お願いがあるんだけど」

フッフッフッ…と笑いながら、花園が身を乗り出して来た。

「久しぶりにあの曲聴いたら、千歳の演奏が聴きたくなっちゃってさー」

「…断る…」

千歳は言うと同時に、立ち上がった。