−それから一年−

「来たよー」

生徒会室の扉を開けながら、三年に入ってから、これで何度目かなぁ…と千歳は考えていた。

「いらっしゃい、何飲む?」

広くすっきりとした生徒会室にいたのは会長の花園一人で、お茶の用意をしていた。

「あれ?皆は?」

いつものメンバーが、見当たらない…

「んーとね、みなみちゃんとパセリちゃんは買い出しで、桂木は遅れるって」

「ふーん」

いつもの席に着くと、千歳はアールグレイを注文した。

生徒会の本部で開かれるお茶会に、部外者の千歳が呼ばれる事が度々あった。

「受験組が、この時期こんな事してていいの?」

「へーきへーき、何とかなるよ」

花園は手慣れた手つきで紅茶を入れると、千歳の前に置いた。

部屋中にアールグレイの香りが漂っていく…

12月半ばの放課後…
うす雲りの空が、生徒会室の窓からのぞいていた。

「…千歳、専門受かったんだって?」

「うん、一抜け」

「そっか」

花園は会長の席に座ると、同じ銘柄の紅茶を一口飲んだ。