鳴海はさえに優しく微笑むと、男に質問した。

「…ちなみに…さえちゃんが千歳に帰れないと、何が不都合なんですか?」

「…運命がさ。もし二年前に、これが拾えていれば、あの子は楽器を続けていた…そして明るい未来が約束され、名のある音楽家と結婚して、幸せに暮らす予定だったんだ、が…」

ぶつぶつと守護霊が、ぼやいている…

さえを見ると、半ば涙目になっていた。

帰れない残留思念は、永遠にその場を、さ迷わなくてはならないのだ…

鳴海は双方を見比べて、男の方を見ると、口元だけで笑った。

「…もちろんあなたは、千歳の不利を放ってはおかないでしょ?」

「…当然だ…俺がただ文句を言うために出て来たとしたら、笑えるだろう…?」

「ええ、本当に…」

「え?」

「大丈夫だよ、さえちゃん。この人が、何とかしてくれるって」

「本当に?」