「うん、もともと製菓学校出身だからね…ここへは…おじ達に、来い来い言われて来た感じ…」

「そのおじさん達は?」

「…旅行に出てる…後は任せた、とか何とか言って…」

「なるほど…あ、そろそろ店開けるんでしょ?」

鳴海は時計に目をやった。

「平気平気、こんな早い時間に来る人なんて、鳴海ぐらいだよ」

「ははは…ちょっとね、昨日の夜、夜行で来てベンチで寝てたんだけど…早く、ここが見てみたくてね」

「?」

「一段落ついたんでね…」

そう言うと鳴海は、ちょっと疲れた顔をして一息ついた。

「あ、これ朝刊?ちょっといいかな…あ、ここ読んでみて」

鳴海は、ある記事を指差した。

「…鳴海グループ解散…って、まさかこの鳴海って…」

「うん、当たり当たり…やっとね、片付いよ、7年かかってね…」

鳴海は目をふせると、コーヒーカップを握りしめた。

「…知ってたんでしょ?実は…」