†                       『…入場時間になりました…ロビー以外での飲食は、お控え下さい。繰り返します…』

ロビーに多くの人が入場して来た。
アナウンス嬢の声が流れ、ホールの入り口が開けられてゆく…

「…入ろうか」
            
ホール内に足を踏み入れると、その天井の高さに二人は圧倒された。

重厚な音楽ホールは三階席まであり、格式のある会場だった。

「花園、出世したよね…」

千歳がホールを見ながら、しみじみと言った。

「本当、あのカッサシオン交響楽団に、入っちゃうんだもんね…」

二人は指定席に着くと、また感嘆の声を上げた。       

「アリーナ席だよ鳴海!すっごい贅沢」

「全く…目が合いそうだよね、花園と」
            
ホール内が満席になっていく…

ざわざわと観客の声がする中、パンフレットを見ていた鳴海が思い出したように、千歳に聞いた。

「あ、そうだ…さっきの話、結局どうなったの?」

「え?ああ、予選大会?…どうなったと思う?」