「ごめんね…時間、間違えちゃって…」

「ううん…早く入れてもらえて、良かったよね」

千歳は自販機から、紙コップ入りのコーヒーを二つ買って来ると、一つを鳴海に渡した。

コンサートホールのロビーから見える空は、朝から降り続いている雪が舞っている…

軽快に降る雪を鳴海と千歳は、ロビーの長イスに腰かけて眺めていた。

開演前の会場に来てしまい、二人が立ち往生していると、係りの人が中に入れてくれたのだった…

人けのないロビーは、とても静かだ…     

何となく声をひそめて、鳴海は千歳に質問した。

「そういえば…花園とは、いつから知り合いなの?」

「花園から聞いてない?」

「うん」

「中学から…部活が一緒だったの」

「へぇ…ブラスバンドだっけ?」

「うん、パート楽器が同じだったんだ…」

「へぇ…」