クリスマスが過ぎ、今年も後わずかという日に、それは訪れた。


呼び鈴が鳴り、玄関を開けると、それは立っていた。

「久しぶりー千歳!元気だった?」

目に飛び込んできたのは、花束とシャンパンのボトル…それから、人懐っこい花園の笑顔だった。

「か、花園?!が、どうしてここにいるの?!」

「大みそかコンサート終わって、打ち上げ会場から直行して来た。はい、これお土産」

白い息をはきながら、高そうなシャンパンと花束が千歳に渡された。

「あ、鳴海いる?その前に、千歳のおじさん夫婦に挨拶かな…」

「とりあえず入って…おじ達は近くの温泉で年越しだから、いないよー」

暖房のきいた暖かいリビングに花園を通すと、千歳はお茶を入れるためキッチンへ行った。

「へぇーそうなんだ…じゃ、鳴海は?」

すすめられたソファーに腰をかけると、花園はたずねた。

テレビを見ていたらしく、紅白歌合戦がついている…

「ここにはいないよ。コーヒーでいい?あ、ソバ食べる?」

「うん、ありがとう、頂く…っていないの?」

「近くのアパートに住んでるよ」

「なんだ、てっきり一緒に住んでいるのかと思った」

「…んな訳ないでしょ…」

キッチンに立ちながら、千歳は脱力した。

「ねぇ呼ぼうよ、会いたい鳴海に」