「すぐにわかったよ、莉子がいること」

会長はあたしの髪に柔らかく触れた。


「引っ越したはずなのに、なんで…」

「中学の時に、また父親の転勤で隣町に引っ越してきたんだ」


話している間も会長の指先はあたしの髪に触れていた。
なんだか懐かしくて、ずっとこうしていたいと思った。


「あれ? うちの母親が何度か莉子のお母さんとランチに行ったりしてるはずだけどな?」

「全然、聞いてない」


少し拗ねた言い方だったかな、と反省した。

けど、すぐに廊下を歩く足音が聞こえてドアが開けられた。


会長の指は、あたしから離れた。