マイクの前で一礼してから上げた顔に、見とれてしまう。


「生徒会役員の選出について説明します―――」

よく通る声で話し出した彼は、次期生徒会長で。
そして今朝、夢に見た秘密基地の男の子だった。


小学校に入学する前に突然引っ越してしまったはずだった。


あの頃のあたしは寂しくて仕方なかった。

小学校でも中学校でも、仲良くなった友達の何人かが同じように「お父さんに転勤の辞令が出た」と寂しそうに転校していった。


だんだん友達と別れることに慣れてきて、大人の都合なら仕方ないと受け入れられるようになった。


秘密基地の男の子のことも、寂しさよりも想い出に変わっていった。