寒い。 そうつぶやいて見上げた空は、さきほどまでオレンジがかっていた雲が 暗闇に負けて黒く染まってきている。 私のこの苦しみも、悲しみも、儚さも 真っ黒な絵の具で塗りつぶしてほしい。 塗りつぶして、真っ黒にして なにもなくしてほしい。 真っ白の絵具だと、 他の感情と混ざってただ曇るだけだから、嫌だ。 そうだ、いっそのこと、水で流してしまおうか。 風に吹かれたおかげで白みも何も帯びない 青空のように。