入園してきた事情のある子は

安田 陸 と言った。

陸は大人しくてだまっていると
ずっとそこにいるような子だった。
自分から輪の中に入ることもしないし
一人でいても平気そうな顔をしていた。

「陸~向こうで輪投げ大会してるよ~
一緒に行こうか。」

逆らうこともなかったけど
その中で輪投げをすることもない。

ただ座ってボーッと見つめているだけ・・・。

主任もサポートはしてくれるけど
なかなか陸を変えることはできなかった。

預かり保育の当番の日

五時になっても祖父母が迎えに来なかった。

「あれ おじいちゃんとおばあちゃん来ないね。」

陸の祖父母はとても金持ちで
会社の経営をしてるらしい。

「今日はお父さんが来るよ。」

気のない答えが帰ってきた。

「れんれくちょうに書いてないけど……
おとうさん知ってるよね お迎えの時間…。」

「朝 ババチャンに何回も言われてた。」

「じゃあ ちょっと遅れているんだね。」

二人っきりになった教室
いい機会だからいろいろ話もできるかな