「て……転校って…引っ越すって?
おうちで何かあったの?」

「俺だけ 東京で暮らすことになった。」

「佳真だけ?意味わかんないよ。」

「うん 今説明するよ。
ねえちゃんがさ オーディションに勝手に応募してさ
それがどういうわけか通っちゃって……
悩む暇もなくとりあえず プロダクションが決まって
で いきなり先週 映画のオーディションを受けることになって
それで土日で東京に行ったんだ。」


オーディション?

プロダクション?

映画?

何それ?


「で…その映画の相手役のオーディションに合格してしまって
自分でもよくわかんないうちに
来週から撮影が始まるんだ。
それで あっちで生活することになった。」


「何言ってんだかよくわかんないよ…。」


「俳優として…やって行こうと思った。
今回オーディションを受けて 気持ちが固まったんだ。
そうしたら俺は 今までここで
大切にしてきたものを 失わなきゃならない……
学校も友達もサッカーも仲間も
そして…彼女も……。」

嘘みたいな話に頭を抱えながら
いきなり切り出された別れへの道を必死に戻ろうとあがいてる。