美玖の指差した先にあるのは、可愛い熊の絵。



「あれってカラスの絵じゃね?」



どこがだよっ!って自分にツッコミたくなる。でもガマン。



あいつにバレねぇように、最低でも彼氏期間中は騙し続けなきゃならない。



美玖は唖然としたようにこっちを見ている。



そりゃそうだろ、読みが外れたんだから。



「どう見ても熊でしょ・・・。」


美玖は呆れた顔で俺を見た。

やっとあきらめたらしく、ハンバーグを口に入れた美玖。



うっは、やっぱりかわいいな。口の周りにソース付いてるよ。



でもアイツは、それに気付いていない。



誘ってる?誘ってるよな、あれ。


俺は無言で美玖の口に手をのばし、ソースをすくった指をなめた。



「え、なにしたの?」



「ソースなめただけだけど?」


次第に美玖の顔が赤くなる。それが俺のSゴコロをかき乱した――。
「なぁ、何で顔赤くなってんだよ?熱でもあるのか?」



俺はわざとおでことおでこをくっつけた。



「え、ないです!」


ますます顔が赤くなる美玖。俺はそのまま美玖を押し倒した。



「え、きゃッ。」


美玖は俺の肩を押して避けようとしているが、力が弱いのか、俺はびくともしない。


俺はそのまま顔を美玖の首にうずめて、強いキスをした。



「ひゃっ。」


美玖の可愛い声が聞こえる。俺は何食わぬ顔で身体を起こした。



「何したんですか?」


何って・・・

「キス☆」
ほのかにキスの余韻が残る首筋を、指でゆっくりたどってみる。



なぜだか分からないけど、急に涙がこみ上げてきた。



「・・・ばかッ!!」



あたしは屋上から飛び出した。



彼氏でも期間限定。

本当はあたしの事なんか好きじゃないのに、あんなことしないで欲しかった。



慶吾さんがそんなに軽い人だなんて思わなかった・・・。


「っうう・・・。」



やむことのない雨は、あたしの頬をしっとりと濡らした。



お昼休み終了のチャイムが、校舎内に響く。



あたしはようやくお弁当を忘れたことに気が付いた。



「・・・もぅ、いいや。」



ぐしゃぐしゃに濡れたまつげを手でこすった。



そこまで怒ることでもなかったと思う。

キスだってしてたし、手だって繋いでた。



でも、なんでだろう?この胸のもやもやは・・・。
とりあえずゆっくり、教室へと歩き始める。



だけど、なかなか前に進めない。



・・・怖い。



あたしは校舎の外れにある、トイレに行った。



今は誰にも会いたくない。そんなキモチでいっぱいだった・・・。



鏡に映る、自分の姿。


ふと目にちらつく、キスマーク。


小さいあたしの心が、ぎゅっと押しつぶされそうになった。
「っう、うわぁあぁあん。」



やんだはずの雨がまた溢れてくる。


慶吾さんへの想いは今でも変わらない、大好きのまま。



慶吾さんもあたしにドSながらも、いろいろ優しくしてくれている。


でもそれは、期間限定の彼女だから・・・。



所詮は、宝くじの大当たりをたまたま引いただけ。



たとえあたしじゃなく、瑠奈だったとしても慶吾さんは同じような素振を見せたんだと思う。
そう考えると、また涙が溢れてしまう。






好きだから・・・好きだから・・・


















軽々しくこんなことやってほしくなかったんだよ――。


ポケットの中でケータイのバイブが続いた。



・・・瑠奈だ。



「もしもし??」



「何もしもしなんてのん気に言ってんのよ!今どこにいるの!?」



瑠奈はあわてた様子で、耳の張り裂けそうな大声で言った。



「校舎の外れのトイレ・・・。」



ふぅ・・・とため息が聞こえる。



「さっき授業始まる前に慶吾さんが来て、あんたのこと探してたのよ?」