「あず…」


なおが小さな声で言った。


あたしはピアノを弾きながら言った。


「どうせ試合でカッコ悪いミスでもしたんでしょ。恥ずかしくって、逃げてきたんでしょ?」


なおは黙りこんだ。


負けず嫌いな、なお。


昔からよく、嫌なことがあると、


こうやって2人で音楽室に隠れたよね。


あたしはピアノを弾いて、


なおはそれを聴いている。


あたしが辛い時も、


なおが辛い時も、


こうして2人で…。