一瞬ためらったようだが、まっすぐに私を見てきた。

「…さっき電車に…同乗してたよな?」

距離はあるが、一応聞き取れるほどの大きさだ。
彼が私に問いかけてきた。


変に思っただろう。
気味悪く思われているだろう。


でもそんなことよりも私は声にびっくりした。

見た目の小綺麗さとはうらはらに
想像したよりも、声が低いのだ。

集中して聞いていなければ、まわりの機械音で
かき消されてしまうだろう そんな感じ。

でもこの声は雪とは違う。
私とは違う。

胸に残るような、ずっしりとした
そんな重みのある声――。



「…ストーカーみたいにしてないで
 こっち来れば?」

そういって隣にあるガンゲー機に
お金を投入していた。

(私にやっていい、って誘ってるのかな?)