長い髪は一つにまとめ、タオルを下に敷き、汗を拭く用のタオルだけ持って、サウナ室に入る。

「よし、まずは10分から行こう」

 10分を2セットして汗を流し、毛穴を開こうという魂胆だった。

 それを繰り返すことによって、毛穴の汚れも落ちるし、その後、冷水で毛穴を絞めて、肌を引き締めようと思って意気込んでいた葵は、サウナ室の中にかかっている音楽のおかげで、自分じゃない誰かがシャワーを使う音が聞こえなかったのが、ちょっとしたミスに繋がった。


 そう、その通り。


 霧吹が風呂に入ってきたわけだ。

 もちろん脱衣所に葵の服があったわけだが、本人どこ吹く風。

 全く気にも止めずに、いつも通りにシャワーで体を流し、風呂に浸かり、

 もちろん行き着くところは……

 サウナ室だ。

 にやりと笑う霧吹には恥ずかしさのかけらも無ければ、葵がどう思うのかすらその眼中になかった。


 葵は、目を閉じて呼吸を浅く、流れ出る汗を感じていたところ、ふわ~っと冷たい風が足下に届いて目を開けた。