「修の野郎いつこっち出て来たんだよ」

「お前が出てくる時期に合わせたらしい」

「あのくされコロンビア野郎が」

「だから、今ここで騒ぎになったらお前が危ねぇだろう。やっと出て来た身だからな。ここはひとつこれで話しを付けようと思う」

 組長は右手の親指と中指、薬指を擦り合わせた。

 これは『お金』を意味する。

「あーそうかよ勝手にやれよ。俺はあいつに関わりたくねぇ」

 面白くないとばかりにポケットからショートホープを出して火をつける息子霧吹。

「将権、俺じゃない。お前が顔を出して来いって言ってんだ」

「は?」

 咥えていたたばこを白いスーツのパンツ、股間部分に落とした。

 後ろで控えていた次郎が咄嗟にタバコを拾い、その部分が燃えないようにパンパン叩いた。

「おいおいおい、痛ぇだろうが!」

 股間部分を叩かれた霧吹は、次郎の頭をひっぱたいた。

 すいませんと頭を下げて下がる次郎に、例の部分が焦げてないかを確かめる霧吹。

「明日にでも用意して行って来い。今後はお前がここを背負っていくんだからな、丁度いい機会じゃねぇか。昔のわだかまりは綺麗さっぱり取って来いよ。チビの頃から一緒だったんだから、話でまとまんだろうが」

 にこっと笑った組長の前歯には、全体的にダイヤモンドが埋め込まれていた。骸骨になったときにはさぞ高く売れることであろう。