「おい、次郎、あいつは誰だ? あの見るからに暑苦しいもっさい男はいったい誰だよ」

 次郎にもんくを言っている間に霧吹の携帯が違う着信のお知らせをしてきた。眉をひそめ、

「あ、なんだよおやじか? 今取り込み中なんだからあとにしてくれよ。それ、」

 言い終える間もなく霧吹の顔が険しくなった。

「くそっ。分かったよ、そんじゃすぐ向かうからよ」

 かったるそうにそれだけ言うと、次郎に「帰るぞ」と言い、次郎は葵に目で合図した。

 葵は何か危険な香りを感じたが、話しかけてきた男に、

「ん、じゃ今度ね、ありがとう。またね」

 それだけ言うと、バッグを胸に抱え、先にずんずん歩いて行くガラの悪い二人を追いかけた。


 リムジンに乗った霧吹は、近づきがたいほどのオーラを放っていた。

 一言も話さず腕を組み、眉間に皺を寄せて何かを考えているようにも見えた。

 話しかけるなオーラをバリバリ全開で身体中に纏っていたので、誰一人として霧吹に話しかけるものはいなかった。


 さわらぬ神にたたりなしだ。