教室に着くと、なんとその日は休講ときた。

 なんだよ、もっと早く言ってよ! と心で舌打ちするも、お顔は笑顔を保つ。

 どこで誰が見ているやもしれぬので、女子らしからぬ行動は極力抑えていた。

 そんな時、背後に視線を感じて素早く後ろを振り返った。

 が、そこには誰もいない。

 今立っているのは1号館の掲示板の前、そこに張り出されていた、『担当教授インフルエンザの為、本日休講』の張り紙を見ているのは葵ただ一人。

 他の学生はしっかりとネットで確認したので、わざわざ大学に出向く必要が無かった。

 機械音痴な葵は、大学の予定が大学のHPに出されるなんてつゆ知らず、このハイテクな時代に一人時代錯誤なアナログで生活を送っていたので、休講の連絡は友達が送ってくれるか、もしくは一人で取っている講義は自分でこうして見に来る他、確認の術がないわけだ。