薄いねずみ色の半袖ワンピースは胸下から切り替えされている。

 その境界線は黒いリボンだ。

 葵はテキストを大学バッグにぶち込むと、家のカギと携帯を持って家を出た。

 腰が痛むがその他に異常はない。

 よって、普通の日常生活に支障がないと思い、医者には行かずに大学に行くという決断をした。


 iPhoneの画面を見たが、真っ黒だ。

 またあいつから連絡が来るのかと思うと、気分が滅入る。

 そもそも、なぜ私があの路地裏に逃げ込んだのが分かったのか・・・解せぬ。

 拳をぐっと握り、バッグに無造作にiPhoneを投げ入れた。

 どうせ他にくる電話も無い。

 せいぜい友だちからのメール程度だろう。

 家のカギを閉めて、小走りにバス停まで急いだ。