ちりん。ちりりん。
自転車のベルが涼やかに鳴る。
淡い瑠璃の瞳に忌々しさを湛えて少女は街角を左折する。
二本の瓶がかちり、かちりと音を響かせ、かごの中でぶつかり合う。
「ああ、吹奏楽部なんて入らなきゃよかった!」
不満そうに口を尖らす少女はしかし、どこか楽しげに見えた。
瓶に写し出されて揺れる夏空。
ソーダに沈む虹がころんと転がった。
夏休みは、まだ始まって3日目。
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すうっと息を吸い込み、ひとつ。
小型のカメラをもてあそんで、ふたつ。
明るい夏空を仰いで、みっつ。
空色に好奇心を秘めた少年は、小さく溜め息を漏らす。
見慣れた黒のソーダに弾ける泡。
それをひとくち、口にしてまた小さく呟く。
「どうしたらいいんだろ」
少年は困ったな、という口調でひとりごち。
とんと夏風が前を通りすぎて行くのを見送って少年はちょっと笑った。
『雨北の街』と書かれた地図をかごにほうり込んで、自転車のロックを解除。
「暇だしな…」
呟いて少年はペダルを踏んだ。
真っ白な積乱雲の下、一本道を一つの自転車の影が走ってゆく。