皆がそれに魅入る。それほど、異質であるのに美しく、そして何故か酷く懐かしい。
"愛しているわ"
"大切にしてあげて―――"
「お、おい。ありゃなんだ」
黄金色の人魚が空中で、何もなかったように消えた。それに我に返った村の者が海の方を見て声を上げる。
――――大波。
逃げろ、という言葉は聞こえたかわからない。流されないようにレトを抱えるので必死になっていた。
荒れた海は穏やかになっていたはず。なのに大波が来るなんて。
波がひけていくのと同時に、咳込んだり無事を確認する声。顔をあげれば村の者は皆無事のようだ。だいぶ海水をかぶってしまっているが……。