それとセイン達も近くに寄ってくるが、言葉が出ない。

 当たり前だ。腹部を血で染めたまま目を開けないレトの姿は、誰が見ても一つの事実を浮かばせるだろう。
 濡れて張り付いた髪をはらう。レト、レト。


 頬に触れる。
 冷たくなりつつある。どうしたらいい?"また"繰り返すのか?



 ――――青年は死に、人魚の娘は嘆く。




「昔話と同じじゃ……」




 傍にきたエノヒがそうもらした。表情は暗い。
 結局同じなのか?変わらぬのか?


 落ちた涙は玉となり波にさらわれる。



「レト――――」