「彼女は―――」



 止血をしたが、時間の問題か。そんなことくらいわかっている。ハレンが言いたいこともわかっている。だが信じたくない。信じない。

 彼女を抱え、海に浮かす。村までは距離がある。村は見えているがその距離が絶望的に遠く感じた。

 心臓をわしづかみさにされたような痛み。いや、それ以上か。


 何故。何故君が?
 何度問うても答えはない。

 空は明けかけていた。先ほどまでの嵐が嘘のように、静まっていく。

 これでは変わらないではないか。今も、昔も。




「ヨウ!」



 村へ着けば、村の住人と私の仲間がいた。「レト!」と真っ先に走ってきたのは、先に助けられていたリンだ。