大波がいくらか静まってきているような気がする。
瞼が重い。
「ヨ、ウ」
「喋るな。今すぐに村に」
「ヨウ!こちらは終わった―――」
船に掴まり、顔を覗かせたのは金の髪の人魚だった。ヨウの仲間らしい。他にもいるようであるが、わからない。
血に染まっているであろう私を見ると、表情を変える。
綺麗な髪をしていた。すごく美しい顔。人魚はやはりみんな美形なのか。
ヨウも美しい顔だが、彼はちょっとだけ悪戯っぽい目をしているのを、私は知っている。
「早く、逃げて」
「逃げるのではない。村に帰るのだろう。だから――――」
何か顔の上に落ちた。
ああ涙か。珠玉となって落ちてくるから、なんだか不思議な光景だった。
ヨウ。
そんな顔しないでよ―――。
* * *