よく見れば、ヨウの格好はおかしかった。ちゃんと人間の衣服を着ているのに、覗くのは尾鰭なのだ。つかまれ、というヨウに私は手を伸ばす。


 ヨウの目が、見開かれた。


 初めて見る表情だなとまじまじと見つめる―――――ことは出来なかった。




「ざまあ、みろ」




 体の力が抜けるって、こういう感じなのか。




「レト!?」




 腹部。
 荒れる視界で、己の腹部を赤で染めた"それ"はまるで生えているかのようだった。
 不気味な音とともに刃は抜かれ、私は膝をつく。

 背後には商人として村に入り込んでいた男の一人、ヘズが矢傷を受けたまま、ヨウに向かって笑む。

 手には剣。再び男が動こうとしたが、ヨウが短剣を投げつけた。