――――助けて。
強く目を閉じる。
もしかしたら沈んでしまうかもしれない。荒れた海は容赦なく襲い掛かってくる。
私にはどうすることも出来ない。
船が大きくうねる。悲鳴、絶叫。怒号。
震える体を、誰かが強く掴んだ。驚いて振り払おうとした私に、それでも強く引き寄せ、抱きしめるようにそれは顔を見せた。
――――ヨウ。
声を出そうとした。だが船はすでに海水が乗り上げるように襲い掛かり、それどころではない。
ヨウは手慣れた様子で短剣で縄を斬っていく「リ、ンは?」
「仲間が先に保護し、村に向かったから大丈夫だ」
「そう……」
「レト」
大丈夫か、というヨウの声は遠い。
顔をあげてみれば、先程までいた男たちの姿はなく、かわりに下半身に尾鰭を持つ人魚の姿が見えた
「早く出よう」
ヨウじゃない声がそう響く。仲間だから安心しろ、という彼に私は頷く。