「ようやくお目覚めか?」

「レト!」



 一人の男が近寄り、顎を掴んで上を向かせた。この顔――――商人か。

 男はくくりつけていた縄をとき、私を歩かせる。船の先までつれていって、投げ込むのか?何をするつもりなのか……。

 男は再び私を縛って身動きを封じた。不安定な場所で、海に落ちてしまわぬように必死だが、どうすることも出来ない。

 背後では私の名を呼ぶリンの声がした。




 怖くないなんて嘘。
 怖くて、たまらない。



 荒れた海で、海水を被りながら男が叫ぶ。




「お前のお気に入りなんだろう!」

「どうなっても良いのか!?」





 "お前"?