心の中に立ち込めた黒いものを吐き出すように小さく息を吐く。

そして、真っ直ぐに前を見ながら口を開いた。


「関係ありません」


そう。

私には関係のない話。


結婚も。

適齢期も。

出産も。

――幸せも。



「やめたんです。そういうの」


キッパリ言い切った私の顔を、じっと見ていた櫻井さん。

それでも、しばらくの沈黙の後、そうか。と言って車のエンジンをかけ始めた。


「帰るか」


その言葉を合図に車はまた走り出した。

その後、一度も言葉を交わす事無く、過ぎ去っていく景色をただじっと見つめた――。