小さな箱の中に2人乗り込む。

そして、ボタンの前に立った櫻井さんが私の方に視線だけ寄越して口を開いた。


「何階だ」

「――…5階です」


本当は何階に住んでいるか知られるのも嫌だったけど、仕方ない。

私の答えに一瞬躊躇った後、5階のボタンを押した櫻井さん。

光っているボタンは「5」だけ。


え……待って。

もしかして――。


私の疑問を察したのか、チラリと私の顔を見下ろした櫻井さん。

そして、小さく息を吐いた後、視線を上に向けて口を開いた。


「そのまさかだ。俺も5階」







――…悪夢だ。