そうすると、彼の考えを曲げる事は困難だ。

ここまで迷惑かけたんだ、今更遠慮しても仕方ないかもしれない。

ここで再び押し問答するくらいなら、諦めて家まで送ってもらった方が早い。

頭の中でカタカタと考えを纏めて、お願いします。と頭を下げた。


駅から家まで車でならすぐだ。

右、左。と案内してマンションの玄関の前まで送ってもらった。



「ここです」


目の前に見えるマンションを指さす。

見慣れた建物に安堵する。

ようやく帰ってこれた。

そう思って、内心大きく息を吐いた、その時――。


「嘘だろ」


信じられないと言わんばかりの顔でそう呟いた櫻井さん。

目の前のマンションを見つめて、目を瞬いている。

そして、首を傾げる私に視線だけ寄越して、苦笑いを微かに浮かべた。


どうしたんだろ?


そんな彼の姿を横目に映していると驚く事を告げられた。




「俺もこのマンション」