それとなく解散の雰囲気を匂わせて、踵を返そうとする。

それでも、櫻井さんはそんな私を引き留めて驚く事を口にした。


「家まで送る」

「え?」

「送る」

「いやいや……さすがにそこまでは……」


申し訳なさすぎる。

というか、これ以上借りを作りたくない。


「俺、車だから」

「車?」

「近くに停めてあるから、乗っていけ」

「いや……でも」


本当に大丈夫なんだけど。

遠くにタクシーも見えるし。


「何かあったら後味悪いだろ」


なかなかYESの返事をしない私を見て、業を煮やしたのか、右手に持っていたバックをもぎ取られた。


やられた。


取り返そうと腕を伸ばしたけど、ひょいっと交わされた。