「飯、食べたら?」

「――あ、はい」


櫻井さんの言葉で、我に返る。

本当は食欲なんてなかったけど、せっかく持ってきてもらったモノを食べないわけにはいかない。

モグモグと、なかなか喉を通らないお粥と格闘していると。


「3時の電車を取っておいた、乗れるか」

「電車……」

「昨日、帰りの切符買ってないって言ってただろ」


その言葉に、あぁ。と思い出す。

最終日はゆっくりしていこうと思っていたから、切符は取っていなかった。

昨日切符は買ってないと言ったから、わざわざ買ってきてくれたんだろう。

本当に申し訳なくて、真っ直ぐに顔を見れない。


「ご迷惑おかけします」

「気にするな」


本当に気にしてない様子の櫻井さん。

だけど、どこまでが本心なのか分からない。


「それまで休んでろ」


そして、困惑する私を置いて部屋から出て行ってしまった。