飲み終えたポカリを冷蔵庫に入れ、ベットに潜り込むと同時に、カチャっと遠慮がちにドアが開いた。

一瞬ビクッとしたけど、すぐに入ってきた人が現れた。


「起きたのか」


そう。

入ってきたのは櫻井さん。

きっとフロントにでも合鍵を貰ったんだろう。


だけど、私が驚いているのはそこじゃない。

私の視線の先は、櫻井さんの手元。

木製のトレーの上には、モクモクと湯気の上がるお粥が乗っていた。


その姿に、頭に上に?マークが飛び交う。

それでも、社会人の条件反射。

上司を目の前にして、この言葉が出る。


「――…おはようございます」


私の挨拶におはよう。と言葉が返ってきた。

なんだこの奇怪な状況。


「体調は?」

「昨日よりは少し楽な……ような気がします」

「そうか」


そう言って、窓際に置いてあったテーブルをベットの横に持ってきた櫻井さん。

そして、その上に件のお粥を置いた。


「あの……?」

「下の朝食にお粥があったから持ってきた、少しでも口に入れたほうがいい」


私の疑問を読み取ってパーフェクトに答えた櫻井さん。

頭の回転が速い人とは会話が早い。