逃げるように視線を彼から窓の外に向ける。

それでも、櫻井さんは逃がしてはくれなかった。


「前も言ったけど、もっと自分を大切にしろ」

「――」

「まぁ、純が悪いんだけどな」


そう付け足す櫻井さん。

その言葉に、ゆっくりと視線を櫻井さんに戻す。

その先には真っ直ぐに私を見つめる瞳があった。


「それで勘違いする男もいるだろ。まぁ、俺にとやかく言う権利はないけど。――忠告」


そう言って、櫻井さんは再びパソコンを打ち始めた。

本当優しいんだか、冷たいんだか分からない人。

間違いなく言えるのは、お節介な人だという事。


そんな事、言われなくても分かってる。

でも、どうでもいいんだ。

本当、もうどうでもいいんだ。


言い返す気力もなく、そのまま寝返りを打って櫻井さんに背中を向けた。

それから、テンポよく打たれるキーボードの音を聞きながら眠りについた。