途端に恥ずかしくなって、慌てて布団を顔までたくしあげた。


弱っている時って何故だろう。

寂しくて心細い。

誰か側にいてほしい。

そう思ってしまう。


きっと勘のいい彼の事だから、私のそんな思いなんて筒抜けなんだろう。

だから、きっと気を使ってここで仕事を始めたんだ。


言葉や言い方は素っ気無いけど、その中に優しさが見える。

深く何も問い詰めてこない所も、きっと彼の優しさだろう。

その優しさに甘えてしまっている自分が、間違いなくここにいる。


カタカタとテンポよくパソコンの打つ音が聞こえる。

私の好きな音。


布団の中に埋もれながら、その心地いい音に耳を傾ける。

その他の音が一切しない世界の中で、そっと布団の中から顔を出して櫻井さんを盗み見た。


真っ直ぐにパソコンの場面を見つめる、その瞳。

窓の外に見える夜景が、その爽やかすぎる顔を少しだけ色っぽく見せた。


「駆って、なんだか速そうな名前ですね」