「でも私は櫻井さんのおかげで、もう一度恋しようって思いました」


櫻井さんのおかげで、自分の弱さに気づいて。

寂しいと叫んでいた心の声に耳を傾ける事が出来た。


幸せになりたかった。

もう一度、誰かを愛してみたかった。

それに気づけた。


「俺は何もしてない。それは松本の強さだ」


そう言って、ゆっくりと抱きしめていた腕を解いて、真っ直ぐに私を見つめた櫻井さん。

その真っ直ぐな眼差しを、じっと見つめ返すと、彼はすっかり冷たくなった私の手をギュッと握った。

それでも、どこか不安気に瞳を伏せた。


「俺はまた、お前を知らないうちに傷つけてしまうかもしれない」

「――」

「変えて、しまうかもしれない」


不安そうな表情で、櫻井さんは更にぎゅっと私の手を強く握った。

その姿を見て、思う。


彼は恐れているんだろう。

誰かを。

私を変えてしまう事を。

また――。


そう思ったと同時に、ギュッと櫻井さんの手を握り返す。

その強さを感じて、櫻井さんの瞳が再び私に戻ってきた。


「櫻井さん私に言いましたよね? もっと自分を信じろって」

「――」

「櫻井さんも、もっと自分を信じてあげて下さい。そして、私の事も」


そんな彼に、そう言う。

私の想いを。