「別荘!?」

「そ、オヤジが休暇を過ごす時の為に建てた」

「別荘って……」

「ここらへん一体はオヤジが買い取った地面らしい。とりあえず草原になってる所全部かな」

「草原全部って、どこまでも草原ですけど」

「まぁ、詳しい事は俺も知らない」


私の驚きとは正反対に、平然とそう言って煙草を灰皿に押し付けた。


え、待って待って。

この広大な草原を全部買った?

どんな金持ちなんだよ。

ってか、櫻井さんのお父さん、一体何者!?


驚きすぎて言葉が出ない私を見て、クスクスと笑った彼。

そして、ゆっくりとその別荘に足を向けて、温かい木の造りの玄関ドアの鍵を開けた。


「どうぞ」

「い、いいんですか」

「何が」

「入っても」

「当たり前だろ」


クスクス笑う櫻井さん。

その隣を、オズオズと進んだ。


だけど、その中に入った瞬間、目を見開く。

目の前に広がっていたのは、春の日差しを浴びて柔らかい光を返してくれる木々だった。


「わぁ...…」


思わず歓喜の声が響く。

別荘の中は、外観同様、全て木で造られていた。

床も、壁も、家具も、全て。

天井は高く、大きな梁がいくつも折り重なっている。

奥には暖炉まであって、まるで絵本に出てくる西洋の家みたいだった。

思いっきり息を吸うと、木のいい匂いが胸いっぱいに広がった。