「もうすぐ着くぞ」


その声で、窓の外に向けていた視線を櫻井さんに向ける。

視線の先には、全く疲れていない様子で車を走らせる櫻井さんがいた。


車を走らせて3時間ほど。

ようやく、櫻井さんの言う『秘密の場所』に着くらしい。

いつの間にか景色はガラッと変わって、辺りは緑いっぱいだ。

どこか嬉しくなって窓を開けると、懐かしい匂いが胸いっぱいに広がった。


「土の匂いがする」

「懐かしいよな。この匂い」


春真っ盛りの今は、世界が緑や花々で溢れている。

目を閉じて、思いっきり息を吸う。

お日様を沢山浴びた葉の匂い。

その中に混ざる土の匂い。

それらが、どことなく田舎の実家を思い出させた。