あの事件から1週間後。
私と櫻井さんは無事退院した。
ただ、警察の人にいろいろ事情聴取されて、隠したいと思っていたこの事も、結局公になってしまった。
まぁ、ナイフを振り回して2人もケガさせたんだ。
公にならないワケがない。
あの男も、ストーカーと、殺人未遂で逮捕。
会社にも報道陣が来たりして、大変だったみたい。
私はしばらく会社を休む事になっていたから、美咲がいろいろと教えてくれた。
相談しなかった私に怒っていたけど、それでも無事で良かったと涙を流していた。
療養後、職場に戻るのが少し怖かった。
周りの目とか、いろいろ。
それでも、仕事場のみんなは、野次馬みたいにこの事件の事を聞いたりしてこなかった。
仕事にも支障をきたす事は無かった。
噂では櫻井さんがそうさせたとか。
本当に一体何者なんだろうか、彼は。
櫻井さんの顔の傷は思っていたよりも浅く、幸い傷は残らないみたい。
でも、やっぱり腕の傷は残ると聞いた。
ショックを受けた私に、櫻井さんは笑って『男だからいいんだ』って言っていた。
それでも、失うばかりではなかった。
この事件で、私達は本当に欲しかったモノを手に入れた。
心から、欲しくて欲しくて、堪らなかったモノを――。