「――っ」
突然顎先を持たれて、そのままグイッと上を向かされた。
その瞬間、真剣な顔の櫻井さんと目が合う。
「松本のせいじゃない。それに、あの時あの場所に俺がいなかったら、守ってあげられなかった。そうなれば、俺は一生後悔していた」
「でも――っ」
「それでも、どうしても償いたいって言うんなら」
抵抗する私をじっと見つめる彼の瞳。
微塵も揺らがない、強い瞳。
そして――。
「俺の側にずっといろ」
そう言った 。
その言葉に、一気に涙が溢れて泣き顔になる。
そんな私を見て、櫻井さんは可笑しそうに笑った。
今日はきっと、私が世界で一番幸せ者だ。
そう思って、彼の胸に飛び込んで泣いた――。