再び涙の渦に飲み込まれた私の頭を、櫻井さんはずっと撫でてくれた。

それでも、ふと我に返って慌てて顔を上げる。


「あ、あのっ――私、先生呼んできますねっ」


勢いよく涙を拭って、そう言う。

いつまで子供みたいに泣いてるんだ私。

早く先生に櫻井さんの目が覚めた事、伝えに行かなきゃ。

それで、ちゃんとどこも異常がないか調べてもらわなきゃ。


そう思って、勢いよく椅子から立ち上がった。

その時。


「――っ」


立ち上がって後ろを振り向いた瞬間。

グッと腕を掴まれて、その場に繋がれる。

え? と思って振り向けば、ベットに寝たまま私の腕を掴んでいる櫻井さんがいた。


「櫻井――さん?」


私の腕を掴んで、真っ直ぐな瞳で私を見上げる櫻井さんのその姿に首を傾げる。

するとその瞬間、そのままグイっと腕を引かれて彼の胸に抱き寄せられた。

そして。


「このまま」


私を胸に抱きしめて、そっと耳元で囁かれる声。

一瞬にしてドクドクと心臓が早鐘のように鳴り始める。


「――あのっ」


半ばパニックになりながら、彼の胸に腕をついて離れようとしても、離さないといわんばかりに腕の力が強まった。

そして、更に深くその腕の中に沈んで閉じ込められる。