その言葉の通り、看護婦さんがいなくなった途端、ベットから勢いよく抜け出す。

部屋の外に出ると、窓の外は真っ暗で、今が夜なのだと分かった。


病院に運ばれてから薬か何かで眠っていたから分からないけど、今がいつの何時なのか分からない。

さすがに一日経ってはいないとは思うけど……。


誰もいない静かな廊下を速足で駆ける。

逸る気持ちを抑えて、目的の病室の前で足を止めた。


カラカラ……。


一度大きく息を吐いてから、同じ造りの病室のドアをゆっくりと開ける。

薄暗い部屋の中には、月明かりだけが差し込んでいる。

そして、ベットの上。

何かのチューブが体から伸びたまま眠っている姿が目に入った。


「櫻井……さん...…」


スリッパを引きずりながら、ベットで眠る彼に近づく。

そっと顔を覗き込めば、左頬には真っ白なガーゼが付けられていた。

他にも、いくつか小さな切り傷が手などに見えた。


今にも泣きだしそうになりながら、ベットの脇にそっと腰かける。

そして、そっとその手を取って握りしめた。


「温かい...…」


触れた先から感じる熱に、涙がポロリと落ちた。

生きていると分かって、本当にホッとした。

何度も確かめるように、その手を握りしめた。