カチ。
カチ。
カチ。
薄暗い部屋の中で、時計の音だけが響く。
重たい瞼を開けると、見慣れない天井が広がっていた。
「松本さん?」
聞きなれない女の人の声が聞こえる。
体が動かないから瞳だけ声のした方に向くと、カルテを持った看護婦が立っていた。
そんな私を見て、その女性は安心したように笑った。
「目が覚めましたか」
「ここ……は」
「病院ですよ」
「病院……」
「そうですよ。今先生を呼んできますね」
ニッコリと笑って、静かに部屋を出て行った看護婦の背中を見つめる。
それでも、頭がなかなか働かなくて、しばらくボーっと天井を見つめた。
だけど、徐々に頭もハッキリしてきて今の現状を把握する。
まだどこか夢うつつで、現実味がないけれど。
確か。
あの後、私も病院に運ばれたんだ。