「は、早く……救急車をっ」
「大した事ない。それより松本も早く手当しろ」
そう言って、抱きついた私の頭を一度優しく撫でた。
その優しさに涙が溢れる。
本当にこの人は、こんな時まで自分より他人の事を心配している。
私のせいで、こんな事に巻き込まれたのに。
1つも私を責めないで。
守ってくれた。
生きている事を確認するように、その体を抱きしめる。
それでも、突然ふっと櫻井さんの力が抜けた。
「櫻井……さん?」
「――」
「ど……したんですか?」
返事をしない櫻井さんを不思議に思って、ゆっくりとその体から離れる。
しかし、支えを失った体は人形の様に地面に倒れ込んだ。
ズルリと地面に倒れ込んだ櫻井さんの姿を見て、一瞬にして世界が時を止める。
一気に血の気が引いて、大声で叫んだ。
「櫻井さんっ!!!!」